免税事業者が課税期間の途中から適格請求書発行事業者になれる期間を6年延長
令和4年度税制改正では、適格請求書等保存方式(インボイス制度)の令和5年(2023年)10月からの円滑な導入に向け、インボイスを発行できる事業者の登録手続の見直しや一部納税者に不利益となりかねない点を防ぐ措置の手当てなど各種環境整備を行う。インボイス制度に関して、免税事業者が課税期間の途中からでも適格請求書発行事業者となることができる期間が、次の通り延長される。
令和5年10月1日から令和11年(2029年)9月30日の属する課税期間について課税期間の途中からでも同発行事業者の登録を可能とする。従来の制度を6年延長する。簡易課税の適用も可能とするが、令和5年10月1日の属する課税期間 以外 に登録を受ける場合、登録開始日から2年を経過する日の属する課税期間までの間は事業者免税点制度の適用を制限する。
電子取引の取引情報、
令和5年12月31日までは出力書面での保存も認めらる
令和4年1月1日以後,検索要件等の保存要件を満たす形で電子取引の取引情報に係る電子データの保存が義務化されるが、所轄税務署長への事前申請が不要なゆうじょ措置(やむを得ない事情がある時に、例外的な対応を認める措置)の整備が行われる。
この措置により,令和5年12月31日までは出力書面での保存も認められ、実質的にこれまでの出力書面又は電子データのいずれかを保存する方法が2年間継続することとなる。令和5年12月31日までの電子取引の取引情報に係る電子データについて、①保存要件に従い保存ができなかったやむを得ない事情があり,かつ,②税務調査で出力書面の提出等に応じる場合には、その出力書面での保存を認める。出力書面の保存に当たり、「引き続き所轄税務署長への手続を要せず」、これまでの出力書面の保存をする場合と同様に、手続不要で書面での保存が認められる。
上記①の“やむを得ない事情”について、『システム整備の予算が確保できなかった』、『他業務との兼ね合いでシステム整備に時間がかかり間に合わなかった』、『社内ワークフローの整備が追いつかなかった』など,事業者の状況において対応が困難であったというのであれば,基本的にはやむを得ない事情があるとして同措置の適用対象になる。「保存要件への対応が困難な事業者の実情に配意し」引き続き手続不要で書面保存を認めるものとなっており、税務調査において調査官に問われた際、事業者がその事情を回答するといった簡易な方法により適用できるものとされる。
また、たとえば『請求書等は電子データ保存のシステム対応が完了したが、契約書など他の書類への対応が済んでいない』、『部門によってシステム対応ができていない部門もある』、『事業所によってシステム対応ができていない事業所もある』といったように 、事業者が電子データ保存に一部対応・未対応という状況で、電子データと書面の保存が混在する場合もゆうじょ措置により認容される。
帳簿の不存在や記載不備に過少申告加算税等を加重、 収入の3分の1以上を不記載で5%、5割以上を不記載で10%
記帳義務および申告義務を適正に履行する納税者との公平性の観点から、帳簿の不保存・不提示や記帳不備に対し、意図しない記帳誤りや帳簿の作成能力に配慮した上で、その記帳義務の不履行の程度に応じて過少申告加算税等を加重する仕組みを設ける。
過少申告加算税制度および無申告加算税制度について、納税者が電磁的記録を含む「一定の帳簿」に記載すべき事項に関し所得税、法人税または消費税に係る修正申告書もしくは期限後申告書の提出または更正もしくは決定があった時前に、国税庁等の職員から帳簿の提示または提出を求められ、かつ、次の(1)、(2)のいずれかに該当するときは、帳簿に記載すべき事項に関し生じた申告漏れ等に課される過少申告加算税の額または無申告加算税の額については、通常課される過少申告加算税の額または無申告加算税の額に申告漏れ等に係る所得税、法人税または消費税の10%((2)に掲げる場合に該当する場合には5%)に相当する金額を加算した金額とする。
(1)職員に帳簿の提示もしくは提出をしなかった場合、または職員にその提示もしくは提出がされた帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額もしくは業務に係る収入金額の「記載が著しく不十分である場合」
(2)職員にその提示または提出がされた帳簿に記載すべき事項のうち、売上金額または業務に係る収入金額の「記載が不十分である場合」((1)に掲げる場合に該当する場合を除く)
ただし、納税者の責めに帰すべき事由がない場合、たとえば災害などの場合は適用しない。
「一定の帳簿」
①所得税または法人税の青色申告者が保存しなければならないこととされる仕訳帳および総勘定元帳、②所得税または法人税において①の青色申告者以外の者が保存しなければならないこととされる帳簿、③消費税の事業者が保存しなければならないこととされる帳簿のうち、売上金額または業務に係る収入金額の記載についての調査のために必要があると認められるもの。
「記載が著しく不十分である場合」
帳簿に記載すべき売上金額または業務に係る収入金額のうち5割以上が記載されていない場合
「記載が不十分である場合」
帳簿に記載すべき売上金額または業務に係る収入金額のうち3分の1以上が記載されていない場合
令和6年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用される。