所得税

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子育て世帯等に対する住宅ローン控除を拡充など

2024年度税制改正では、経済社会の構造変化を踏まえ、子育て世帯及び若者夫婦世帯に対する住宅ローン控除を拡充する。子育て世帯等における借入限度額について、新築等の認定住宅については500万円、新築等のZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅については1000万円の上乗せ措置を講ずる。
※ZEH水準省エネ住宅:日本住宅性能表示基準の「断熱等性能等級5」かつ「一次エネルギー消費量等級6」に適合する住宅

夫婦のどちらかが40歳未満であって、年齢19歳未満の子ども(扶養親族)がいる者が、認定住宅等の新築等をして2024年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合、引き下げる予定だった住宅ローン等の年末残高の借入限度額を、現行水準のまま2024年も維持して特例の適用ができる。そのほかの世帯については、2024年から予定通り引き下げる。減税対象となる借入限度額は、「認定住宅」が5000万円、「ZEH水準省エネ住宅」が4500万円、「省エネ基準適合住宅」が4000万円となる。

また、認定住宅等の新築や認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得に係る床面積要件の緩和措置(床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満にも適用)については、2024年12月31日以前に建築確認を受けた家屋についても適用できることとする。

また、子育て特例対象の個人が所有する居住用の家屋について一定の子育て対応改修工事をして、その居住用の家屋を2024年4月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合を適用対象に追加し、その子育て対応改修工事に係る標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の10%相当額をその年分の所得税の額から控除できることとする。

一定の子育て対応改修工事とは、
(1)子どもの事故を防止するための工事、(2)対面式キッチンへの交換工事、(3)開口部の防犯性を高める工事、(4)収納設備を増設する工事、(5)開口部・界壁・床の防音性を高める工事、(6)間取り変更工事(一定のものに限る)であって、その工事に係る標準的な工事費用相当額(補助金等の交付がある場合には、補助金等の額控除後の金額)が50万円を超えること等一定の要件を満たすものをいう。



換価遺言が行われる場合の譲渡所得の課税

遺言により遺言執行者を定め、相続財産を換価して、その換価した金銭を遺贈することを内容とする次のような換価遺言があった場合、相続財産である土地家屋などの不動産や株式などの有価証券が売却されたとき、不動産の売却手続き、換価した財産の申告はどのようになるのでしょうか。

 相続財産:土地・家屋
相続人:甲、乙

①相続財産である土地家屋を売却し、葬儀費用、負債、土地家屋の売却に伴う費用及び遺言執行費用を控除した残額の全部をA(相続人でない。)に遺贈する。
②遺言執行者はBとする。

 1.不動産の売却手続き
①相続人甲、乙名義への法定相続分での相続による相続登記
②遺言執行者Bによる売買契約の締結
③権利者を買主、義務者を相続人甲、乙として売買による所有権移転登記
が行われます。
※この手続きには、相続人甲、乙の同意が必要ありません(公、乙の実印の押印や印鑑証明書などの書類が不要)。相続人甲、乙がこの手続きが行われていることを知らないということもあります。

このような場合、登記上の不動産の売却は、法定相続分でで取得した相続人甲、乙となります。
実質所得者課税の原則(所法12)により、相続財産についてなんら実質的な権利を有しない相続人に対して譲渡所得の課税が行われることはありません。
上記の遺贈は権利義務の全部を遺贈する包括遺贈ですので、相続財産は受遺者Aが取得し、さらに換価した不動産売却代金も受領しています。譲渡所得は実質所得者である受遺者Aに帰属し、申告、納税義務は受遺者Aが負うこととなります。
また、仮に葬儀費用、負債などの負担の記載がなく、土地家屋を売却(換価)代金を遺贈する特定遺贈であるような場合でも、受遺者について、相続開始時から遺言により収益の享受が確定し、実質的に譲渡所得を有するため、申告、納税義務を負うこととなります。

 所得税法第12条(実質所得者課税の原則)
資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の者がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する者に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

 所得税法取扱通達12-1(資産から生ずる収益を享受する者の判定)
法第12条の適用上、資産から生ずる収益を享受する者がだれであるかは、その収益の基因となる資産の真実の権利者がだれであるかにより判定すべきであるが、それが明らかでない場合には、その資産の名義者が真実の権利者であるものと推定する。

 

住宅取得等資金贈与に係る非課税

住宅取得等資金贈与の非課税の特例は、マイホームの取得等のために父母や祖父母から資金の贈与をうけた場合に贈与税が非課税となる制度、昨年10月からの消費税の増税に伴って拡充されており、贈与税が最大で3000万円まで非課税となる。

特例の適用期限は2021年12月31日まで。
特例の主な要件には、
(1)贈与者が親・祖父母などの直系尊属であること
(2)受贈者が 贈与年1月1日現在で20歳以上である子・孫などの贈与者の直系卑属であること
(3)贈与年の受贈者の合計所得金額が2000万円以下であること
(4)適用対象は、居住用の住宅の新築、中古住宅(敷地含む)の取得、増改築等であり、贈与年の翌年3月15日までにその贈与された金額の全額を新築等に充てること
(5)床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下、かつその家屋の床面積の2分の1以上が受贈者の居住用であること
(6)居住等要件として、贈与年の翌年3月15日までに、その家屋に居住するか、同日以後遅滞なくその家屋に居住することが確実であることが見込まれること
(7)贈与年の翌年3月15日までに、一定の書類を添付して税務署に贈与税の申告をすること
などがある。

消費税率10%が適用される「良質な住宅用家屋」(一定の条件を満たす省エネルギー性・耐震性を備える家屋)に係る住宅取得等資金贈与で、2019年4月~2020年3月までの間に契約を締結したその住宅等の取得等は3000万円まで、それ以降の契約の締結については、2020年4月~2021年3月までは1500万円まで、2021年4月~2021年12月までは1200万円までが非課税限度となる。

「良質な住宅用家屋」以外で消費税10%が適用される一般住宅に係る住宅取得等資金贈与は、2019年4月~2020年3月までは2500万円まで、2020年4月~2021年3月までは1000万円まで、2021年4月~2021年12月までは700万円までが非課税限度となる。

なお、この制度は受贈者ごとに適用され、たとえば20歳以上の孫が3人いる場合、それぞれ要件を満たすことにより、贈与者の財産を9000万円まで非課税で贈与することもできる。

2020年度税制改正のポイント、歯科医院に関わる確定申告での留意点

税理士法人洛 代表社員

税理士・医業経営コサルタント(日本医業経営コンサルタント協会認定)

佐々木保幸

 

2020年度税制改正のポイント

〇富裕層が国内外で行う課税逃れの防止

5,000万円以上の国外財産を有する居住者に義務付けられている国外財産調書制度の見直しが行われる。これは、納税者に対し国外財産の取引情報の開示を求めるもので、税務調査の際に税務職員が納税者に対し必要な資料(例えば、外国にある預金口座の入出金明細など)の提示・提出を求めた場合、税務職員が指定する日までに納税者がそれらの提示・提出をしない場合には、申告漏れに対する加算税(過少申告加算税及び無申告加算税)が加重される。

さらに、価値の落ちにくい国外の中古不動産について、簡便法による耐用年数によって家賃収入を上回る減価償却費を計上することで税額を減少させる行為に対し、国外不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、耐用年数を簡便法により計算した国外にある中古の建物の償却費に相当する部分の金額については生じなかったものとみなし、損益通算等をできないこととする。

また、国外親族に対する扶養控除等の適用にあたっては,親族関係書類及び送金関係書類の添付が義務付けられているが、非居住者である親族に係る扶養控除の対象とる親族から、年齢30歳以上70歳未満の者で①留学により非居住者となった者、②障害者、③その居住者からその年における生活費又は教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者のいずれにも該当しない者が除外されるなこととなった。

その他、国内では、消費税につき、賃貸住宅を取得した際、非課税売上である住宅家賃に対応して仕入税額控除の対象となるべきものでないものについて、作為的に課税売上割合をかさ上げして仕入税額控除を行う課税逃れを防止するため、居住用賃貸建物の課税仕入れについては仕入税額控除の適用を認めないこととし、実際に課税売上(事業用として賃貸するもの)があれば、3年間の実績に応じて控除額を調整する仕組みとする。また、住宅についてその用途を限定せず貸し付けた場合であっても、人の居住の用に供することが明らかなものについては消費税を非課税とするなど、建物の用途の実態に応じた見直しが行われる。

〇所有者不明土地に課税できる仕組みの整備など

未登記の所有者不明土地について、土地の所有者の把握ができない場合、固定資産課税台帳の所有者情報が更新できないことによる固定資産税の課税漏れが指摘されている。その土地を所有者ではない者が利用していたとしても、現制度ではその利用者が納税義務者とはならない。また、所有者が死亡している場合にはその相続人など「現に所有している者」が納税義務者となるが、その把握のための課税庁による調査の事務負担が大きいことも指摘されている。

このため、①その土地・家屋に所有者として登記されている個人が死亡している場合、市町村長は「現に所有している者」に対し、その者の氏名や住所等、固定資産税の賦課徴収に必要な事項を申告させることができる、②住民基本台帳及び戸籍簿等の調査や関係者への質問等を行っても所有者の存在が1人も明らかでない場合で、その資産の使用者が存在するときは、市区町村長は、あらかじめその使用者に通知した上で、その使用者を所有者とみなして固定資産税課税台帳に登録し、固定資産税を課税することができる。

その他、改正相続法で創設される配偶者居住権及びそれに伴う敷地の利用権について、期間満了前の消滅等の対価として支払を受ける場合の、その譲渡所得の計算における取得費の算出方法等が明らかにされている。

〇買換え特例の延長など

次の買換え等の特例は、2年延長される。

・特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例

・居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除

・特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除

さらに、特定の資産の買換えの場合等の課税の特例は、一部見直しを行った上で3年の延長される。

また、住宅用家屋の所有権の保存登記、移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記に対する登録免許税の税率の軽減措置、不動産の譲渡に関する契約書等に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限が2年延長される。

その他、新規住宅に居住した個人が、居住年から3年目に該当する年中に従前住宅(新規住宅及びその敷地以外の資産)を譲渡した場合で、その譲渡について居住用財産の譲渡所得の3,000万円控除や居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(軽減税率)などの適用を受けるときは、新規住宅について住宅ローン控除等が適用できないこととされる。

〇納税環境の整備

準確定申告の電子的手続の簡素化や納税地の移動があった場合の振替納税手続の簡素化、地方税共通納税システム(eltax)における対象税目の拡大(個人住民税の利子割、配当割、株式等譲渡所得割を追加)など、税務手続の電子化の促進が示されている。

〇その他、社会問題への対応など

未婚のひとり親で合計所得金額500万円以下など一定の要件を満たす者について寡婦(寡夫)控除を適用する。また、従前の寡婦(寡夫)控除について寡婦に寡夫と同様の所得制限(合計所得金額500万円以下)を設けるなどの見直しが行われている。

また、老後の資産形成を促進するため、確定拠出年金等の加入要件の見直しや、一般NISAの勘定設定期間終了にあわせ、投資枠を二階建てにした新たなNISA(特定非課税累積投資契約(仮称)に係る非課税措置)が創設される。

 

歯科医院に関わる確定申告での留意点

○社会保険診療収入、その他の収入などの計上

社会保険診療収入は、保険点数と窓口収入を合わせておきましょう。歯科医院の場合、自費診療があるので窓口収入が大きくなりがちです。年末までに回収できていない窓口収入も計上します。自賠責や労災などの収入は請求してから数か月して入金されますので、歯ブラシなどの販売、金属の売却収入、自動販売機の収入、業者からのリベートなどとともに年末までに入金がないものも含めてもれないように計上しましょう。

○歯科材料の年末在庫の計上

歯科材料を業者から仕入れても、それを治療に使わずに年末に残っている場合には、

その仕入金額は棚卸資産として経費から除く必要があります。まだ使っていないのでそれに対する収入が計上されていないからです。

○必要経費と生活費の区別

医院の必要経費か生活費(家事費)かの区別をしておきましょう。また、家事関連費とは、事業経費と生活費が混在しているようなケースの費用をいいます。たとえば、交際費や水道光熱費、自動車の減価償却費やガソリン代など。主たる部分が医院の業務の遂行上必要なものであり、かつ、明らかに区分できる場合、事業用部分について必要経費とできます。青色申告の場合で、帳簿書類等に業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされていれば、その事業用部分を必要経費として計上できます。

〇社会保険診療報酬の所得計算の特例

1年間の社会保険診療収入が 5,000万円以下 であり、かつ自由診療収入なども含めた1年間の総収入金額が 7,000万円以下 である場合は、社会保険診療報酬に対応する必要経費について、実際に発生した経費金額に代えて、社会保険診療報酬に所定の概算経費率を乗じて計算した経費金額とすることができます。

〇消費税の計算

2年前(2017年)の自由診療報酬など課税売上高が1,000万円を超えた場合は、消費税の課税事業者(消費税を納める義務がある事業者)となります。原則課税の場合は、消費税がかかる取引と消費税がかからない取引、標準税率(10%)・軽減税率(8%)・旧税率(8%)を正しく区分し、簡易課税の場合は、みなし仕入率を誤らないようにしましょう。

概算取得費とその後の更正の請求

譲渡所得の計算において取得日、取得費、改良費が明らかでない場合、概算取得費を使うことがあります。
更正の請求(国通法23条1項)には「課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあつたことにより」と規定されており、更正の請求の一般的なケースは「計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあつたこと」を要件としており、当初申告での概算取得費の適用は、その計算は国税に関する法律の規定に従っており、その計算に誤りはないので間違いではないので、その後の更正の請求は認められません。

ただし、措置法31条の4ただし書きに規定するように、概算取得費がそのただし書きの各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合は、すなわち、概算取得費により申告した後に実際の取得時の取得費、改良費等が明らかとなった場合は、その金額により更正の請求ができます。

措置法31条の4(長期譲渡所得の概算取得費控除)
個人が昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地等又は建物等を譲渡した場合における長期譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、所得税法第38条及び第60条の規定にかかわらず、当該収入金額の100分の5に相当する金額とする。ただし、当該金額がそれぞれ次の各号に掲げる金額に満たないことが証明された場合には、当該各号に掲げる金額とする。
一 その土地等の取得に要した金額と改良費の額との合計額
二 その建物等の取得に要した金額と設備費及び改良費の額との合計額につき所得税法第38条第2項の規定を適用した場合に同項の規定により取得費とされる金額

措置法通達31の4-1(昭和28年以後に取得した資産についての適用) 措置法第31条の4第1項の規定は、昭和27年12月31日以前から引き続き所有していた土地建物等の譲渡所得の金額の計算につき適用されるのであるが、昭和28年1月1日以後に取得した土地建物等の取得費についても、同項の規定に準じて計算して差し支えないものとする。

所得税法通達38-16 土地建物等以外の資産(通常、譲渡所得の金額の計算上控除する取得費がないものとされる土地の地表又は地中にある土石等並びに借家権及び漁業権等を除く。)を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上収入金額から控除する取得費は、法第38条及び第61条の規定に基づいて計算した金額となるのであるが、当該収入金額の 100分の5に相当する金額を取得費として譲渡所得の金額を計算しているときは、これを認めて差し支えないものとする。(

必要経費

1)必要経費とは

所得税法37条では、

① 総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額

② その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用

とされています。この定義にあてはまる費用等が必要経費に当たります。

 

また、家事関連費は原則必要経費不算入ですが、所得税法45条及び同法施行令96条の規定から、次に掲げる要件に該当するものが必要経費に該当します。

③ 家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、必要である部分を明らかに区分することができる場合の当該部分に相当する経費、

④ 青色申告者である居住者の家事関連費のうち、取引の記録等に基づいて、事業所得等を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費、

が家事関連費のうち、必要経費とするための要件です。

大きく分ければ、必要経費に該当するための4つの要件になります。

 

合理的に区分する、按分するとされているのではなく、「明らかに区分することができ

る」、「明らかにされる」ということです。ここでは、合理的とはされません。

 

2)必要経費の要件

(1)必要経費

① 一般的に原価と呼ばれるものであり、売上原価つまり売上を得るために直接必要な費用です。企業会計でいう「費用収益対応の原則」に当たるものと同様です。例をあげれば、販売業でいう商品仕入れなどです。

並列的例示として、「その他当該総収入を得るために要した費用」とされています。製造原価や建設原価、不動産原価など例えば外注費、材料仕入れ、不動産販売などです。

 

② 販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用]とされます。また、「その他」は並列的例示ですから、

a.販売費、

b.一般管理費、

c.その他事業所得を生ずべき業務について生じた費用、

の3つの費用が必要経費に当たります。

販売費等は、一般的には損益計算書に記載される項目で、商品や製品を販売するために直接かかる費用(販売費)と、会社全般の業務の管理活動にかかる費用(一般管理費)の合計額を指します。

個人つまりプライベートに属する費用などが含まれないことは当然です。

 

(2)家事関連費

家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、必要である部分を明らかに区分することができる場合の当該部分に相当する経費、青色申告者である居住者の家事関連費のうち、取引の記録等に基づいて、事業所得等を生ずべき業務 の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費、が必要経費とされています。

④については、青色申告者で居住者であるということ、雑所得が除かれているということについて、注意をすることが必要です。

③ですが、青色、白色の区分はありません。主たる部分というのは、事業所得等を

生ずべき業務の遂行上必要な費用の割合が50%以上ということとされており、なおかつその部分が明らかに区分されているということが要件となります。

合理的とはいっていません、「明らかに区分」とされています。この 部分を実務

的には、どのようにすることが法律上の要件をクリアすることにななります

 

以上、細かく分ければ次のとおりです。

 

 

     総収入金額に係る売上原価

     その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額

     その年における販売費、

     一般管理費

オ その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額

カ 家事関連経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費

キ 青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得 又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費

 

カについては、業務遂行上必要な部分の金額を明らかに「する」ことができる場合とあるので、明らかに区分することの意義を考えることが必要です。

さらに、キについては、取引等の記録に基づいて、業務遂行上直接必要な金額が明らかに「される」場合において、その金額を必要経費とすることになります。

カの「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上 直接必要であったことが明らかにされる部分」について、基本通達では、「業務の内容、 経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘 案して判定する」とされます。

また、同じく、「主たる部分・・・・・・業務の遂行上必要」であるかどうかについては、「その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部 分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。」とされており、仮に、「当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。」 ともされています。

 

所得税法

(必要経費)

第三七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のう ち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の 総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じ た費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とす る。

2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計書上必 要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

(家事関連費等の必要経費不算入等)

第四五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金 額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しな い。

       家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの

二 所得税(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付す る第百三十一条第三項(確定申告税額の延納に係る利子税)、第百三十六条(延払条 件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)、第百三十七条の二第十二項(国外転 出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)又は第 百三十七条の三第十四項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等 の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)の規定による利子税で、その事業 についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるもの を除く。)

三 所得税以外の国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及 び重加算税並びに印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税

四 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村 民税(都民税及び特別区民税を含む。)

       地方税法の規定による延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金

六 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方 公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料

       損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの

八 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及 び延滞金

九 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)

十 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金

十一 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金

2 居住者が供与をする刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条(贈賄)に規定 する賄賂又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭 の額及び金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額(その供与に要する費用の額 がある場合には、その費用の額を加算した金額)は、その者の不動産所得の金額、事業 所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。

3 第一項第二号から第七号までに掲げるものの額又は前項に規定する金銭の額及び 金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の価額は、第一項又は前項の居住者の一 時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しない。

所得税法施行令

(家事関連費)

第九十六条            法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政 令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。

一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は 雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区 分することができる場合における当該部分に相当する経費

       前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受け ている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが 明らかにされる部分の金額に相当する経費

所得税法基本通達

(主たる部分等の判定等)

45-1        令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定す

る「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費

の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案

して判定する。

(業務の遂行上必要な部分)

45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑 所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業 務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。

納税者が2人以上いる場合の扶養控除の所属の変更

2人以上の居住者の扶養親族に該当する者をいずれの居住者の扶養親族とするかは、これらの居住者が提出するその年分の「予定納税額の減額承認申請書」、「確定申告書(期限後申告を含みます。)」、「給与所得者の扶養控除等申告書」、「従たる給与についての扶養控除等申告書」又は「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」(以下「申告書等」といいます。)に記載されたところによります。
 また、いったんその申告書等により所属が定められた後でも、改めてその所属の異なる記載をした申告書等を提出することによりその所属を更に変更することはできますが、その場合には、扶養親族を増加させようとする者及び減少させようとする者全員がその所属の異なる記載をした申告書等を提出しなければなりません。
 なお、この場合の申告書等には、「修正申告書」及び「更正の請求書」は含まれませんので、いずれかの居住者がいったん確定申告書を提出している場合には、扶養親族の所属の変更はできません。

【設例1】
【問】 夫は長男を扶養親族とする「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し年末調整を行っており、妻は扶養親族の記載をせずに「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し年末調整を行っています。
 今年は夫が多額の医療費を支払ったため、夫が長男を扶養親族から除外する「確定申告書」を提出し、妻が長男を扶養親族に含める「確定申告書」を提出したいのですが、このような扶養控除の所属の変更は認められますか。
【答】 扶養親族を増加させようとする者(妻)及び減少させようとする者(夫)全員が、その所属の変更を記載した「確定申告書」を提出すれば、扶養親族の所属の変更は認められます。
【問】 夫は長男を扶養親族とする「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出し年末調整を行っており、妻は扶養親族の記載をせずに「確定申告書」を提出しました。
 今年は夫が多額の医療費を支払ったため、夫が長男を扶養親族から除外する「確定申告書」を提出し、妻が長男を扶養親族に含める「更正の請求書」を提出したいのですが、このような扶養控除の所属の変更は認められますか。
【答】 妻がいったん「確定申告書」を提出している場合には、長男について扶養親族の所属の変更は認められません。
いったん誰の扶養親族となるかが定まった場合でも、その後提出する申告書等にこれと異なる記載をすることによってその所属を変更することができますが、扶養親族を増加させようとする妻が提出する「更正の請求書」は、この場合の申告書等には含まれませんので、扶養親族の所属の変更は認められません。

国税庁 タックスアンサー 所得税 1181

事業としての不動産貸付けとそれ以外の区分

1 事業的規模の判定

 不動産などの貸付けによる所得は、不動産所得になります。
 不動産所得は、その不動産貸付けが事業として行われている(事業的規模)かどうかによって、 所得金額の計算上の取扱いが異なります。
 不動産の貸付けが事業的規模 かどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているか どうかによって、実質的に判断します。
 ただし、建物の貸付けについては、次のいずれかの基準に当てはまれば、原則として事業として行われているものとして取り扱われます。

  1. (1) 貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること。
  2. (2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

2 所得金額の計算上の相違点

 事業的規模である場合とそれ以外の場合の所得金額の計算上の相違点のうち主なものは次のとおりです。
(1) 賃貸用固定資産の取壊し、除却などの資産損失については、事業的規模の場合は、その全額を必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、その年分の資産損失を差し引く前の不動産所得の金額を限度として必要経費に算入されます。
(2) 賃貸料等の回収不能による貸倒損失については、事業的規模の場合は、回収不能となった年分の必要経費に算入しますが、それ以外の場合は、収入に計上した年分までさかのぼって、その回収不能に対応する所得がなかったものとして、所得金額の計算をやり直します。
(3) 青色申告の事業専従者給与又は白色申告の事業専従者控除については、事業的規模の場合は適用がありますが、それ以外の場合には適用がありません。
(4) 青色申告特別控除については、事業的規模の場合は一定の要件の下最高65万円が控除できますが、それ以外の場合には最高10万円の控除となります。

配当金を受け取ったとき(配当所得)

1 配当所得とは

 法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、投資法人からの金銭の分配又は投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託以外のもの)の収益の分配などに係る所得をいいます。

2 所得の計算方法

 配当所得の金額は、次のように計算します。

 収入金額(源泉徴収される前の金額)-株式などを取得するための借入金の利子=配当所得の金額

() 収入金額から差し引くことができる借入金の利子は、株式など配当所得を生ずべき元本のその年における保有期間に対応する部分に限られます。
 なお、譲渡した株式に係るものや確定申告をしないことを選択した配当に係るものなどについては、収入金額から差し引くことができる借入金の利子には当たりません。

3 配当所得の源泉徴収

 配当所得は、配当等の支払の際に次に掲げる株式等の区分に応じて所得税等が源泉徴収等されます。源泉徴収された所得税は、原則として、その年分の納付すべき所得税額を計算する際に差し引きます。

(1) 上場株式等の配当等の場合

イ 平成2111日から平成241231日までの間に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、10%(国税7%・地方税3)の軽減税率により所得税が源泉徴収されます。

ロ 平成2511日から平成251231日までの間に支払を受けるべき上場株式等の配当等については、10.147%(国税7.147%・地方税3)の軽減税率により所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

ハ 平成2611日以後に支払いを受けるべき上場株式等の配当等については、20.315%(国税15.315%・地方税5)の税率により所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

(1) 発行済株式の総数等の3%以上(平成23101日前に支払を受けるべき配当等については5%以上)に相当する数又は金額の株式等を有する個人(以下「大口株主等」といいます。)が支払を受ける上場株式等の配当等については、この軽減税率適用の対象となりませんので、次の(2)により源泉徴収されます。

(2) 平成2511日から平成491231日までの間に支払を受ける配当等については、所得税とともに復興特別所得税が源泉徴収されます。

(2) 上場株式等以外の配当等の場合

イ 平成241231日以前に支払を受ける場合
20(地方税なし)の税率により所得税が源泉徴収されます。

ロ 平成2511日以後に支払を受ける場合
20.42(地方税なし)の税率により所得税及び復興特別所得税が源泉徴収されます。

 

(配当金の源泉徴収) 平成2611日以後に支払いを受ける場合

非上場株式等の配当等

所得税 20.42

上場株式等の配当等
3%以上保有の大口株主が受けるものを除く)

所得税 15.315% 住民税 5

 

4 税額の計算方法

 配当所得は、原則として確定申告の対象とされますが、確定申告不要制度を選択することもできます。
   (1) 総合課税
 総合課税とは、各種所得の金額を合計して所得税額を計算するというものです。
 総合課税の対象とした配当所得については、一定のものを除き配当控除の適用を受けることができます。

(2) 確定申告不要制度
 配当所得のうち、一定のものについては納税者の判断により確定申告をしなくてもよいこととされています。これを「確定申告不要制度」といいます。
 確定申告不要制度の対象となる配当等は、主に次のとおりとなっていますが、この制度を適用するかどうかは、1回に支払を受けるべき配当等の額ごと(源泉徴収選択口座内の配当等については、口座ごと)に選択することができます(平成22年以後))。
 なお、確定申告不要制度を選択した配当所得に係る源泉徴収税額は、その年分の所得税額から差し引くことはできません。

イ 上場株式等の配当等及び投資法人からの金銭の分配の場合(大口株主等が受ける場合を除きます。)
 支払を受けるべき配当等の金額にかかわらず、確定申告を要しません。

ロ 上場株式等及び投資法人以外の配当等の場合
 一回に支払を受けるべき配当等の金額が、次により計算した金額以下である場合には、確定申告を要しません。

10万円 × 配当計算期間の月数() ÷ 12

() 配当計算期間が1年を超える場合には、12月として計算します。また、配当計算期間に1月に満たない端数がある場合には、1月として計算します。

 

住民税の取り扱い

非上場株式等の配当について、申告不要を選択することができません。したがって、申告不要を選択した場合でも、収入金額に含める必要があります。

 

3)上場株式等の配当所得について、申告分離課税を選択

平成2111日以後に支払を受けるべき上場株式等の配当所得については、総合課税によらず、申告分離課税を選択することができます。(申告分離課税の選択は、確定申告する上場株式等の配当所得の全額についてしなければなりません。)

 

 

確定申告をする

確定申告をしない
(確定申告不要制度適用)

総合課税を選択

申告分離課税を選択

借入金利子の控除

あり

あり

なし

税率

累進税率

   

平成2111日~平成241231
所得税 7% 地方税 3

平成2511日~平成251231
所得税 7.147% 地方税 3

平成2611日~
所得税 15.315% 地方税 5

配当控除

あり

なし

なし

上場株式等の譲渡損失との損益通算

なし

あり

なし

扶養控除等の判定

合計所得金額に含まれる

合計所得金額に含まれる(※)

合計所得金額に含まれない

() 平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納税することになります。

※ 上場株式等に係る譲渡損失と申告分離課税を選択した上場株式等に係る配当所得との損益通算の特例の適用を受けている場合にはその適用後の金額、上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除の適用を受けている場合にはその適用前の金額になります。

 

参考)確定申告で、総合課税、配当控除の適用を選択した場合

上場株式等の場合(大口株主を除く)

 

課税総所得金額等
(配当所得を除く)

選択

695万円超

不利

695万円以下

有利

非上場株式等の場合(上場株式等の大口株主を含む)

 

課税総所得金額等
(配当所得を除く)

選択

1,000万円以上

不利

900万円以上1,000万円未満

どちらでも同じ

900万円未満

有利

 

配当所得があるとき(配当控除)

1 制度の概要

 配当所得があるときには、一定の金額の税額控除を受けることができます。これを配当控除といいます。
 配当控除を受けるためには、確定申告が必要です。その際には、配当について源泉徴収された所得税と、この配当控除の額が納付すべき税額の計算上控除されます。

2 配当控除を受けることができる配当所得

 日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、 証券投資信託の収益の分配などで、確定申告において総合課税の適用を選択した配当所得に限られます。従って、外国法人から受ける配当等は、配当控除の対象となりません。

() 次の配当などは配当控除の対象になりません。

(1) 基金利息

(2) 私募公社債等運用投資信託等の収益の分配に係る配当等

(3) 国外私募公社債等運用投資信託等の配当等

(4) 外国株価指数連動型特定株式投資信託の収益の分配に係る配当等

(5) 特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等

(6) 適格機関投資家私募による投資信託から支払を受けるべき配当等

(7) 特定目的信託から支払を受けるべき配当等

(8) 特定目的会社から支払受けるべき配当等

(9) 投資法人から支払いを受けるべき配当等

(10) 確定申告不要制度を選択したもの

 

 

 

配当控除額

総所得金額の中に配当控除の対象となる配当所得がある場合には、その配当所得に下表の控除率を乗じた金額を控除します。

非居住者の株式譲渡

給与所得者が1年以上の予定で海外の支店などに転勤すると、一般的には日本国内に住所を有しない者と推定され、所得税法上の非居住者となります。

 非居住者の場合、日本で課税を受けるのは国内源泉所得のみとされています。
 また、非居住者に対する課税は、日本国内に恒久的施設(PE)を有するか否かでその方法が異なります。
 給与所得者が海外出向中であれば、一般的には恒久的施設を有しない非居住者に該当します。
 恒久的施設を有しない非居住者が株式等を譲渡した場合、次の(1)~(6)のいずれかに該当する所得が国内源泉所得として課税対象となります。このうち、(1)~(5)に該当するものについては15%の税率により申告分離課税となり、(6)に該当するものについては総合課税の対象となります。なお、これらに該当する場合は確定申告が必要です。

  1. (1) 内国法人の株券等の買集めをし、これをその内国法人等に対し譲渡することによる所得
  2. (2) 内国法人の特殊関係株主等である非居住者が行う、その内国法人の株式等の譲渡による所得
  3. (3) 税制適格ストックオプションの権利行使により取得した特定株式等の譲渡による所得
  4. (4) 特定の不動産関連法人の株式の譲渡による所得
  5. (5) 日本に滞在する間に行う内国法人の株式等の譲渡による所得
  6. (6) 日本国内にあるゴルフ場の株式形態のゴルフ会員権の譲渡による所得

 なお、これらに該当する場合であっても、租税条約により日本で課税されないことがあります。
 ただし、平成27年度税制改正により、国外転出時課税制度が創設され、平成27年7月1日以後に国外転出(国内に住所及び居所を有しないこととなることをいいます。)をする一定の居住者が1億円以上の対象資産を所有等している場合には、その対象資産の含み益に所得税が課税されることになりました。

 

※居住者と非居住者の区分

我が国の所得税法では、「居住者」とは、国内に「住所」を有し、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有する個人をいい、「居住者」以外の個人を「非居住者」と規定しています。

「住所」は、「個人の生活の本拠」をいい、「生活の本拠」かどうかは「客観的事実によって判定する」ことになります。 したがって、「住所」は、その人の生活の中心がどこかで判定されます。

ある人の滞在地が2か国以上にわたる場合に、その住所がどこにあるかを判定するためには、職務内容や契約等を基に「住所の推定」を行うことになります。

「居所」は、「その人の生活の本拠ではないが、その人が現実に居住している場所」とされています。

租税条約では、わが国と異なる規定を置いている国との二重課税を防止するため、居住者の判定方法を定めています。

具体的には、それぞれの租税条約によらなければなりませんが、一般的には、次の順序で居住者かどうかを判定します。

個人については、「恒久的住居」、「利害関係の中心的場所」、「常用の住居」そして「国籍」の順に考えて、どちらの国の「居住者」となるかを決めます。 

※恒久的施設(PE) 

非居住者に対する課税では、国内源泉所得のみが課税対象とされますが、同じ国内源泉所得であっても、その支払を受ける非居住者が日本国内に「恒久的施設」を有しているか、更に「恒久的施設」を有する場合には、どの「恒久的施設」の区分かによって、課税関係が異なってきます。

例えば、国内において行う事業から生ずる所得については、「恒久的施設を有する非居住者は、総合課税とされますが、「恒久的施設」を持たない非居住者の場合には、課税しないこととなっています。

「恒久的施設」という用語は、一般的に、「PE」(PermanentEstablishment)と略称されており、次の3つの種類に区分されています。

(1) 支店、出張所、事業所、事務所、工場、倉庫業者の倉庫、鉱山・採石場等天然資源を採取する場所。ただし、資産を購入したり、保管したりする用途のみに使われる場所は含みません。

(2) 建設、据付け、組立て等の建設作業等のための役務の提供で、1年を超えて行うもの。

(3) 非居住者のためにその事業に関し契約を結ぶ権限のある者で、常にその権限を行使する者や在庫商品を保有しその出入庫管理を代理で行う者、あるいは注文を受けるための代理人等(代理人等が、その事業に関わる業務を非居住者に対して独立して行い、かつ、通常の方法により行う場合の代理人等を除きます。)。

日本国内に恒久的施設を有するかどうかを判定するに当たっては、形式的に行うのではなく機能的な側面を重視して判定することになります。例えば、事業活動の拠点となっているホテルの一室は、恒久的施設に該当しますが、単なる製品の貯蔵庫は恒久的施設に該当しないことになります。

※国内源泉所得

居住者については、原則として、日本国内はもちろん国外において稼得した所得も課税対象とされますが、非居住者については、日本国内で稼得した「国内源泉所得」のみが課税対象とされます。

「国内源泉所得」には次のようなものがあります。

  1. (1) 国内において行う事業又は国内にある資産の保有・運用若しくは譲渡により生ずる所得
  2. (2) 国内において組合契約等に基づいて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの
  3. (3) 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物及び建物の附属設備又は構築物の譲渡による対価
  4. (4) 国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価
    例えば、映画俳優、音楽家等の芸能人、職業運動家、弁護士、公認会計士等の自由職業者又は科学技術、経営管理等の専門的知識や技能を持つ人の役務を提供したことによる対価がこれに当たります。
  5. (5) 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価
  6. (6) 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち一定のもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等
  7. (7) 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等
  8. (8) 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの
  9. (9) 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、又はその譲渡の対価、著作権の使用料又はその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの
  10. (10) 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの
  11. (11) 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品
  12. (12) 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく年金等
  13. (13) 国内にある営業所等が受け入れた定期積金の給付補てん金等
  14. (14) 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配

 

これらについての課税方法は、国内源泉所得の種類や恒久的施設の有無によって異なります。なお、租税条約によって国内源泉所得について異なる定めがある場合は、租税条約に従うことになります。
また、(1)以外は源泉徴収の対象となります。

 

(参考)SBI証券 Q&A

海外出張になりました。取引は継続できますか?

中長期で海外赴任をなさる等の事由により、外国為替、及び外国貿易法(外為法)第6条第1項第5号の定めによる「(本邦)非居住者」に該当する場合、当社では継続してお取引いただくことができず、原則として口座を閉鎖していただくこととなります。


当該「(本邦)非居住者」に変更となった時点で、「非居住者」の方に関する税制面での取扱いが不明確であり、当社において、当該税制による税額相当分控除のシステムが対応していないためです。
当社にお預けいただいている有価証券等はご売却いただくか、移管等のお手続きをお願いしております。また、お客さまの口座を確認のうえ、売却と出金以外の新規のお取引につきまして制限を設けさせていただきますので、あらかじめご了承ください。

「(本邦)非居住者」に該当する場合、NISA口座は利用することはできません。
既に開設されているNISA口座は、出国までに「非課税口座廃止届出書」の提出が必要になります。
「非課税口座廃止届出書」を提出しなかった場合であっても、出国した時に「非課税口座廃止届出書」を提出したものとみなされNISA口座は廃止になります。
出国後にNISA口座で支払われた配当金等がある場合には、遡及して課税されることとなります。


ご参考までに、上記、「(本邦)非居住者 」の規定は 次の通りです。

・外国にある事務所(本邦法人の海外支店等、及び現地法人並びに国際機関を含む)に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
・2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在する者
・本邦出国後外国に2年以上滞在するに至った者
・上記に掲げる者で、事務連絡、休暇等のため一時帰国し、その滞在期間が6ヶ月未満の者(ただし、上記に関わらず、本邦の在外公館に勤務する目的で出国し、外国に滞在する方は、「居住者」として扱われます。)

海外に住んでいても口座開設はできますか? 

当社における口座開設は、日本国内に在住のお客様に限定させていただいております。
具体的には、外国為替及び外国貿易法第6条第1項第5号に定める「居住者」を基準としております。

外国為替及び外国貿易法(外為法)上の「(本邦)居住者」の規定は、次のとおりです。
以下のケースに該当せず、日本国内の住所が記載された本人確認書類をご提出いただけるお客様は、口座開設が可能です。

・外国にある事務所(本邦法人の海外支店等及び現地法人並びに国際機関を含む)に勤務する目的で出国し外国に滞在する者
・2年以上外国に滞在する目的で出国し外国に滞在する者
・本邦出国後外国に2年以上滞在するに至った者
・上記に掲げる者で、事務連絡、休暇等のため一時帰国し、その滞在期間が6ヶ月未満の者(但し、上記に関わらず、本邦の在外公館に勤務する目的で出国し外国に滞在する方は、居住者として扱われます)

日本国外で証券業務を営むにはその国の証券監督官庁から許認可(免許)を取得する必要がありますが、当社は日本以外での許認可を取得しておりません。
また、当社サービスが国ごとに異なる金融商品取引関係法令に抵触しないか、特にインターネットにおける取引との関係は未だ不明確な点が多く法律上の問題を解決しきれておりません。
以上の観点から、当社では「(本邦)非居住者」となられるお客様の口座開設は承っておりません。

 

 

Q1 白色申告、青色申告って何ですか

 通常の申告は白色申告と言います。事業などをしている場合には、取引の記録や領収書・請求書などの保管を要件に「青色の承認」を受けることができ、その承認に基づき提出する申告を青色申告と言います。
 かつては、申告書自体が青色だったのですが、現在は申告書の「青色」の欄に〇印を入れるだけになっています。
 青色の承認を受けた場合には「特典」が設けられており、専従者給与や引当金、特別控除(簡易簿記と複式簿記で控除額が異なります)、純損失の繰越控除などが主なものになります。
 また、税務署などが「更正・決定」等をする場合にも、青色申告者には「理由の付記」が必要になります。
 多くの問題点も有する制度なのですが、それはまた別の機会に。

Q2 生命保険が満期になったのですが申告の必要はありますか

 積立式の生命保険(養老保険など)が満期になった場合には、保険会社から満期の明細書が届きます。それを見てもらって「受取保険金-支払済保険料」の金額(その年に複数の満期がある場合にはそれらの合計額)が50万円(一時所得の特別控除)を超えない場合には、他に一時所得がない限り、原則として申告の必要はありません。
 かつては利回りが良かったので申告をする人が多かったのですが、現在は余程大口の方か複数口が一度に満期になった場合以外は少なくなったようです。
 また、少々超えた場合でも申告する必要がない場合もありますので、お問い合わせください。

Q3 妻(年間給与300万円)の医療費も私から控除できますか

 医療費控除は「自己または自己と生計を一にする配偶者その他の親族」の医療費を支払った場合に適用されます。扶養家族かどうかは関係ありません。あなたが実際に負担したのであれば当然控除の対象になります。
 なお、出産や高額療養により補助金や保険金などの給付を受けた場合には、その分は支払った医療費から引く必要がありますので、ご注意ください。

Q4 事業が赤字なのですが申告の必要はありますか

 他に所得がないようでしたら申告の必要はありませんが、「損失の繰越控除」の適用を受ける場合には「期限内申告」(3月15日まで)をしなければなりません。(宥恕規定有)

損失の繰越控除(3年間)には次のようなものがあります。
【白色・青色とも】
  ・被災事業用資産の損失により赤字が出た場合
  ・災害、盗難、横領等による雑損失が生じた場合
【青色のみ】
  ・事業から生じた純損失がある場合

くれぐれも不利になるようなことの無いようにしてください。


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