(1)必要経費とは
所得税法37条では、
① 総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額
② その年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用
とされています。この定義にあてはまる費用等が必要経費に当たります。
また、家事関連費は原則必要経費不算入ですが、所得税法45条及び同法施行令96条の規定から、次に掲げる要件に該当するものが必要経費に該当します。
③ 家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、必要である部分を明らかに区分することができる場合の当該部分に相当する経費、
④ 青色申告者である居住者の家事関連費のうち、取引の記録等に基づいて、事業所得等を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費、
が家事関連費のうち、必要経費とするための要件です。
大きく分ければ、必要経費に該当するための4つの要件になります。
合理的に区分する、按分するとされているのではなく、「明らかに区分することができ
る」、「明らかにされる」ということです。ここでは、合理的とはされません。
(2)必要経費の要件
(1)必要経費
① 一般的に原価と呼ばれるものであり、売上原価つまり売上を得るために直接必要な費用です。企業会計でいう「費用収益対応の原則」に当たるものと同様です。例をあげれば、販売業でいう商品仕入れなどです。
並列的例示として、「その他当該総収入を得るために要した費用」とされています。製造原価や建設原価、不動産原価など例えば外注費、材料仕入れ、不動産販売などです。
② 販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用]とされます。また、「その他」は並列的例示ですから、
a.販売費、
b.一般管理費、
c.その他事業所得を生ずべき業務について生じた費用、
の3つの費用が必要経費に当たります。
販売費等は、一般的には損益計算書に記載される項目で、商品や製品を販売するために直接かかる費用(販売費)と、会社全般の業務の管理活動にかかる費用(一般管理費)の合計額を指します。
個人つまりプライベートに属する費用などが含まれないことは当然です。
(2)家事関連費
家事関連費の主たる部分が事業所得等を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、必要である部分を明らかに区分することができる場合の当該部分に相当する経費、青色申告者である居住者の家事関連費のうち、取引の記録等に基づいて、事業所得等を生ずべき業務 の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費、が必要経費とされています。
④については、青色申告者で居住者であるということ、雑所得が除かれているということについて、注意をすることが必要です。
③ですが、青色、白色の区分はありません。主たる部分というのは、事業所得等を
生ずべき業務の遂行上必要な費用の割合が50%以上ということとされており、なおかつその部分が明らかに区分されているということが要件となります。
合理的とはいっていません、「明らかに区分」とされています。この 部分を実務
的には、どのようにすることが法律上の要件をクリアすることにななります
以上、細かく分ければ次のとおりです。
ア 総収入金額に係る売上原価
イ その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額
ウ その年における販売費、
エ 一般管理費
オ その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額
カ 家事関連経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができる場合における当該部分に相当する経費
キ 青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受けている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得 又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが明らかにされる部分の金額に相当する経費
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カについては、業務遂行上必要な部分の金額を明らかに「する」ことができる場合とあるので、明らかに区分することの意義を考えることが必要です。
さらに、キについては、取引等の記録に基づいて、業務遂行上直接必要な金額が明らかに「される」場合において、その金額を必要経費とすることになります。
カの「主たる部分」又は同条第2号に規定する「業務の遂行上 直接必要であったことが明らかにされる部分」について、基本通達では、「業務の内容、 経費の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘 案して判定する」とされます。
また、同じく、「主たる部分・・・・・・業務の遂行上必要」であるかどうかについては、「その支出する金額のうち当該業務の遂行上必要な部 分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。」とされており、仮に、「当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。」 ともされています。
所得税法
(必要経費)
第三七条 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のう ち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の 総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じ た費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とす る。
2 山林につきその年分の事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計書上必 要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、その山林の植林費、取得に要した費用、管理費、伐採費その他その山林の育成又は譲渡に要した費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。
(家事関連費等の必要経費不算入等)
第四五条 居住者が支出し又は納付する次に掲げるものの額は、その者の不動産所得の金 額、事業所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しな い。
一 家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの
二 所得税(不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業を行う居住者が納付す る第百三十一条第三項(確定申告税額の延納に係る利子税)、第百三十六条(延払条 件付譲渡に係る所得税額の延納に係る利子税)、第百三十七条の二第十二項(国外転 出をする場合の譲渡所得等の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)又は第 百三十七条の三第十四項(贈与等により非居住者に資産が移転した場合の譲渡所得等 の特例の適用がある場合の納税猶予に係る利子税)の規定による利子税で、その事業 についてのこれらの所得に係る所得税の額に対応するものとして政令で定めるもの を除く。)
三 所得税以外の国税に係る延滞税、過少申告加算税、無申告加算税、不納付加算税及 び重加算税並びに印紙税法(昭和四十二年法律第二十三号)の規定による過怠税
四 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)の規定による道府県民税及び市町村 民税(都民税及び特別区民税を含む。)
五 地方税法の規定による延滞金、過少申告加算金、不申告加算金及び重加算金
六 罰金及び科料(通告処分による罰金又は科料に相当するもの及び外国又はその地方 公共団体が課する罰金又は科料に相当するものを含む。)並びに過料
七 損害賠償金(これに類するものを含む。)で政令で定めるもの
八 国民生活安定緊急措置法(昭和四十八年法律第百二十一号)の規定による課徴金及 び延滞金
九 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(昭和二十二年法律第五十四号)の規定による課徴金及び延滞金(外国若しくはその地方公共団体又は国際機関が納付を命ずるこれらに類するものを含む。)
十 金融商品取引法第六章の二(課徴金)の規定による課徴金及び延滞金
十一 公認会計士法(昭和二十三年法律第百三号)の規定による課徴金及び延滞金
2 居住者が供与をする刑法(明治四十年法律第四十五号)第百九十八条(贈賄)に規定 する賄賂又は不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第十八条第一項(外国公務員等に対する不正の利益の供与等の禁止)に規定する金銭その他の利益に当たるべき金銭 の額及び金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の価額(その供与に要する費用の額 がある場合には、その費用の額を加算した金額)は、その者の不動産所得の金額、事業 所得の金額、山林所得の金額又は雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない。
3 第一項第二号から第七号までに掲げるものの額又は前項に規定する金銭の額及び 金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の価額は、第一項又は前項の居住者の一 時所得の金額の計算上、支出した金額に算入しない。
所得税法施行令
(家事関連費)
第九十六条 法第四十五条第一項第一号(必要経費とされない家事関連費)に規定する政 令で定める経費は、次に掲げる経費以外の経費とする。
一 家事上の経費に関連する経費の主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は 雑所得を生ずべき業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区 分することができる場合における当該部分に相当する経費
二 前号に掲げるもののほか、青色申告書を提出することにつき税務署長の承認を受け ている居住者に係る家事上の経費に関連する経費のうち、取引の記録等に基づいて、不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき業務の遂行上直接必要であつたことが 明らかにされる部分の金額に相当する経費
所得税法基本通達
(主たる部分等の判定等)
45-1 令第96条第1号《家事関連費》に規定する「主たる部分」又は同条第2号に規定す
る「業務の遂行上直接必要であったことが明らかにされる部分」は、業務の内容、経費
の内容、家族及び使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案
して判定する。
(業務の遂行上必要な部分)
45-2 令第96条第1号に規定する「主たる部分が不動産所得、事業所得、山林所得又は雑 所得を生ずべき業務の遂行上必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち当該業 務の遂行上必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定するものとする。ただし、当該必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明らかに区分することができる場合には、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入して差し支えない。